フランスに来て、パティスリーでスタージュ(研修)をして、販売員を経て、パティシエとして職につくことができました。
今回は、フランスでのパティシエとして就職するまでの流れを説明します。現在のフランスの飲食業界の状況、働くのに必要な書類、パティスリーの組織や労働環境、語学力などをお伝えします。
ショコラティエやブーランジェ、販売員などの職業も同じ流れと内容となっています。フランスのパティスリーやブーランジェ、ショコラティエなどのお菓子に関する店で働きたい方にとって参考になれば幸いです。
フランスのパティスリーの現状
2020年のコロナウイルスによるロックダウン時に、エッセンシャルワークといった職業の大変さが浮き彫りになりました。職業によっては在宅勤務が可能で、通勤による移動やストレスが軽減できるということから、在宅勤務のできない職業が敬遠されるようになりました。ロックダウンの期間に、肉体労働系の仕事からデスクワークのできる仕事に転職する人も増えました。
特に飲食業界でも人手不足が顕著で、レストランのウエイターや販売員、料理人、パティシエ、パン職人などが足りていないと言われています。私が働いていたパティスリーでも、パティシエも販売員も常に数人は足りないという状況が慢性化しています。
また、ウクライナでの戦争の影響により電気料金が上がり、営業時間を減らしたり、休業日を設けたりしている店もあります。
就職までの流れ
仕事を探して、必要な書類を準備し、面接して就職が決まるまでの流れを詳しく説明します。
フランスで仕事を探す
フランスで求人を出している店を見つける方法は主に4つあります。
- フランスの職業安定所(現 France Travail)で探す
- パティスリーにある募集貼り紙
- リストパティスリーのサイト
- 自発的動機(candidature spontanée)
- フランスの職業安定所(現 France Travail)で探す
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フランスの職業安定所は現在フランス・トラヴァイユ(France Travail)とう名称で、2023年12月末まではポール・アンプロワ(Pôle emploi)と言っていました。
フランスの職安のサイトでは求人募集しているパティスリーを検索することができます。仕事の詳細や条件などが詳しく書かれているので検討しやすく、同時に複数のパティスリーに応募することができます。
そのほかにも、indeed や jobartisants などの求人サイトで探すことができます。
いずれもサイト上で応募できるので、実際に訪問したり電話をかけたりという手間がないので気軽に応募できますし、フランス語の心配も減ります。ただ、気軽に応募できる分、応募数も多く、面接に進めないこともあります。不採用でも連絡がないこともよくあります。
- パティスリーにある募集貼り紙
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パティスリーではわざわざ職安などに求人を出さずに、店に貼り紙を貼って探すところも多いです。自宅や通いやすそうな場所にあるパティスリーをあたってみましょう。
張り紙を見つけたら、店員さんに応募するにはどうしたらいいか、どんな感じの仕事かを聞いてみるといいでしょう。張り紙のみの情報なので詳しい条件やお給料などはあらかじめ知ることはできませんが、店員さんと話すことで大体の店の雰囲気を知ることができます。
フランス語の心配があるかもしれませんが、他の応募方法よりも反応が良いと思います。
- パティスリーのサイト
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パティスリーに張り紙は貼らないけど、自社サイトには求人を載せているという場合もあります。高級なパティスリーや外観の雰囲気を大事にしている店は張り紙は貼っていないこともあります。
自社サイトに応募要項や応募方法も書いてあり、メールやサイト上で応募できるようになっています。気軽に応募もでき、店からの反応も良いと思います。
ちなみに、私は自社サイトから2件応募したのですが、どちらも1時間以内に電話がありました。(フランスにしては早いと思いました)
- 自発的応募(candidature spontanée)
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Candidature spontanéeとは求人募集は行っていない店に自らすすんで応募することです。フランスでは一般的な応募方法で、求人が必要になったら声がかかったり、経歴を見て採用したい!となることもあるのです。
働きたいパティスリーがある方はぜひ積極的に応募してください。
必要な書類を準備する
応募する時点で必要な書類は、履歴書(CV)と動機書(Lettre de motivation)です。
履歴書や動機書にはきっちりとした書き方がありますが、日本のように決まったフォーマットはありません。それぞれA4用紙1枚ずつにまとめ、手書きではなく、パソコンで入力します。
動機書は書き方がある程度決まっており、パティシエに求められる学歴や能力、性格に応じて書きます。
応募する
働きたいパティスリーを見つけ、書類を準備したらいよいよ応募します。上記に書いたようにサイト上やメールで履歴書・動機書を送ったり、直接渡します。
応募したら、パティスリーより面接の連絡があります。私の場合は電話のみでの連絡で、メールで返信があったことはないです。電話の着信音をオンにしておきましょう。
不採用の場合は、連絡がないことがあります。私は不採用の時は連絡全くなしでした。数日経って連絡がなかったら、諦めて次に行きましょう。
面接
いよいよ面接です!
面接では、自己紹介や志望動機はもちろん、今までどこでどんな仕事をしていたのかなどの質問をされます。履歴書に書いてありますが、改めて聞かれます。
労働時間や環境などの説明があり、うちで働いていけるか、交通手段なども確認されます。
面接は通常1〜2回行われます。私や周りの人たちの経験からすると、履歴書や動機書である程度絞り込まれて、面接の時にはすでに採用がある程度決まっているというパターンが多いようです。上記にも書きましたが、パティスリーは人手不足というわけで、面接に呼ばれた時点で採用は決まっているという可能性は高いです。面接は本当に働けそうかを確認するというような感じでした。
質問・チェックしたいこと
面接の時に店側に聞いておきたいことを事前に確認しておきましょう。例えば、以下のような項目です。
- 勤務時間
- 給料
- CDD/CDI
- 従業員や店の雰囲気
- 面接官とのフィーリング
一番気になるお給料ですが、フランスでのパティシエの経験や資格がない場合は最低賃金(SMIC)からのスタートになることがあります。
CDDは期間の定めのある労働契約のことで、その期間を終えるとCDIに切り替わることもあります。CDIは期間の定めのない労働契約のことです。
必ずしもスーツを着る必要はありません。経験上、応募するパティスリーの雰囲気に合った服装をするのがいいと思います。
小さなパティスリーであればカジュアルな格好で、高級な店であればきちんとした服装にするといいと思います。いずれにしても清潔で小綺麗な服装にするといいと思います。
面接に来ている現地フランス人を見ていると、普段着がほとんどのようです。中にはジャージやジーンズの人もいます。
契約書に署名する
採用されたら、後日労働にあたり契約書を交わします。
採用が決まった時点で必要する書類は健康保険証(Carte Vitale)と身分証明書(carte d’identité)です。健康保険証はもちろんフランスで発行されたものです。身分証明書は滞在許可書(Titre de séjour)のことで、労働可能な旨が記載されていることが必要です。
契約書を交わす日に健康保険証と身分証明書の持参を求められるとこがあります。コピーを取るだけで提出は必要ありません。
最初の数ヶ月(契約による)は試用期間となります。
採用された後に入社を断る場合は、この契約書にサインする前にしましょう。
この契約書にサインをしたら、正式に就職となります。
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