パネットーネ

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パネットーネはイタリア発祥でクリスマスを彩るお菓子ですが、フランスでも親しまれています。

この記事ではパネットーネとはどんなお菓子か、誕生したたくさんの由来話、シュトーレンとの違いを説明します。

目次

パネットーネとは?

パネットーネとは、イタリア・ミラノ発祥の、ブリオッシュに干しぶどうやフルーツコンフィを加えてつくられるクリスマスのお祝い用のパン菓子です。

丸いドーム状の形で、高さは約12~15cmほどあります。

生地は小麦粉と酵母に牛乳やバター、卵、砂糖でつくり、クラッシックなパネットーネには干しぶどう、シトロンとオレンジの皮のコンフィを加えます。そのほかにもチョコレートやグラサージュで表面を覆ったり、リモンチェッロで香りをつけたり、サバイヨンなどのクリームやチョコレートチップを詰めることもあります。

  • リモンチェッロ(Limoncello)とは、南イタリア発祥のレモンを用いたリキュールのこと

イタリアを代表するクリスマス菓子ですが、隣国フランスでもクリスマスには欠かせないほど定番のお菓子となっています。

パネットーネ

フランス語の名前

Panettone

[panɛttɔnɛ] パネトーネ / イタリア語

Panettone

[panɛtɔn] パネトン / フランス語

パネットーネの構成・材料

分類デザート/菓子パン
構成ブリオッシュ生地

干しぶどう

果物の砂糖漬け

柑橘系の皮
材料小麦粉

バター



牛乳

酵母

砂糖

フルーツコンフィ(果物の砂糖漬け)

干しぶどう

柑橘系の皮
パネットーネ

パネットーネの由来

最も有名な説です。

時代16世紀
イタリア
地方ロンバルディア州
ミラノ
人物パティシエ

パネットーネの由来

パネットーネが生まれた物語はいくつか残っています。

「トニーが作ったパンです」説

このトニーが作った説は最も有名で、広く伝わっています。

イタリアの食品を扱っているメーカーCIROによると、16世紀にミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァ(通称イル・モーロ / Ludovico Sforza 1452-1508)によって、クリスマスの晩餐会が開かれました。

ある年、パティシエが誤ってオーブンにお菓子を置きっぱなしにして、焦がしてしまいました。この出来事を知った若い見習い料理人トニーが食糧庫にある材料を使って新しいお菓子を作りました。

そのお菓子は、少量の小麦粉やバター、卵で作った生地にシトロンの皮、干しぶどうを加えたお菓子でした。これがパネットーネの始まりです。

トニーは自分が作ったお菓子が受け入れられるか不安で、食堂のカーテンの奥に隠れ、招待者の反応をこっそりと見ていました。

その不安とは裏腹に招待者はこのお菓子を賞賛し、イル・モーロにこのお菓子の名前は何かと尋ねました。料理人は正直に秘密を話し、「それはトニーが作ったパンです」と答えました。その言葉はイタリア語で « pan del Toni » といい、時が流れるにつれて「パネトーネ」と呼ばれるようになったと言われています。

このように、他の料理人が出て行ったことがきっかけで新しいお菓子が生まれるという話はよくある由来です。マドレーヌも例として挙げられます。

恋と工夫から生まれた伝説

トーニというパン職人が公爵の宮廷で働いていました。その公爵の娘アダルジーザは、騎士ウゲット・デッリ・アンテッラーリに愛されていたといいます。彼女の心を射止めたいウゲットは、自分をパン職人の見習いに見せかけ、トーニの工房で特別なケーキを焼き上げました。

そのケーキは大成功を収め、公爵夫妻の庇護を受けたウゲットは、ついにアダルジーザとの結婚を手に入れることができたのです。

恋がきっかけで生まれた伝説

昔、ミラノにウゲット・デッリ・アテラーニという若い貴族がいました。彼はアダルジーザというパン職人の娘に恋をしました。

そこで、彼女の家業を助け、商売を繁盛させるために特別なパンのレシピを考えます。普通のパン生地にバターや砂糖、砂糖漬けのフルーツを加えてつくったところ、とても好評を得ました。

こうして新しいお菓子が誕生し、それが「パネットーネ」になったと伝えられています。

修道院で考案説

また、貧しい修道院にウゲッタという若い修道女がいました。彼女は他の修道女たちとクリスマスを祝うために、パン生地に少量の砂糖、フルーツコンフィ、干しぶどうを加えたお菓子を作りました。祝福の印として、お菓子の上に十字を描きました。

パネットーネ

現実は…?

このように魅力的な伝説がいくつか残っていますが、より現実的な説があります。

パネットーネはミラノ地方の古代のパン作りの伝統と関係があり、イタリアの家庭では宗教的なお祭り、特にクリスマスのためにパンを焼いていました。このパンはバターや卵、フルーツコンフィといった高価な材料が使われていました。このパンの名前はミラノの方言で「贅沢なパン」を意味する「パン・デル・トン « pan del ton »」と呼ばれ、パネットーネの名前の由来とされています。

ミラノにパネットーネが初めて登場したのは1490年頃とされています。その後すぐにアルプス山脈からシチリア島に至るまでイタリア全土に広まり、クリスマスの象徴として人気を博しました。

有名なお菓子の由来には、しばしば魅力的な伝説が付け加えられます。パネットーネのように複数の物語が語り継がれているのは、実際の起源がはっきりしないために、人々がロマンや象徴性を求めて物語を編み出したからだとも考えられます。

また、こうした伝説はただの甘いパンに過ぎなかったものを、クリスマスという宗教的な祝祭にふさわしいお菓子へと高めてくれます。豊かな材料が使われるパネットーネは、神からの祝福と新しい年への希望を表し、その丸く高く膨らんだ形は生命の復活や天への憧れを映し出しています。

マドレーヌの由来が王侯貴族や聖人と結びつけられて語られるのと同じように、パネットーネも単なる食べ物ではなく、歴史や信仰、愛の物語を背負った『象徴的なお菓子』として受け入れられてきたのです。

パネットーネはなぜ値段が高い?

パネットーネは高価なお菓子だと言われることがあります。

パネットーネはクリスマスの時期になると街に姿を現す特別なお菓子です。フランスではスーパーやマルシェ、そしてパティスリーに並び、1kgあたり12〜42€ほどで売られています。12€程度であれば一般的ですが、42€になると確かに高価なお菓子といえます。

なぜ、パネットーネはしばしば高価なお菓子とされるのでしょうか。

その理由はいくつかあります。

まず、材料です。小麦粉、バター、卵、砂糖、牛乳、干しぶどう、フルーツコンフィが基本ですが、この中ではバターとドライフルーツの価格が高騰しています。その他の材料は比較的安価であるものの、チョコレートやクリームを加えたタイプはさらに値段が上がります。また、フランスで販売されるパネットーネの多くはイタリアから輸入されており、輸送費が価格に上乗せされます。

しかし、価格の背景には、単なる材料や輸送費以上の意味があります。パネットーネが高価とされる最大の理由は「季節限定の商品」であることです。クリスマスという短い期間にしか出回らないため、希少性と特別感が高まります。さらに、華やかな時期を彩るため、布に包まれたり、豪華な箱やリボンで装飾されたりと、包装にもコストがかかります。

そしてなにより、パネットーネには単なる菓子以上の意味があります。パネットーネには単なる菓子以上の意味があります。前章で触れたように、それは「クリスマスを象徴する特別なお菓子」であり、文化や信仰を繁栄する祝祭のお菓子としての価値も価格に反映されているのです。

よって、少し高価であっても人々に愛され続けているのではないでしょうか。

パネットーネとシュトーレンの違い

フランスでは、パネットーネもシュトーレンもクリスマスの定番お菓子として親しまれています。材料や雰囲気は似ていますが、発祥や味わいにはそれぞれの個性があります。

発祥の違い

パネットーネはイタリア北部・ミラノで生まれたお菓子で、その起源は1490年頃にさかのぼります。一方、シュトーレンはドイツ東部のドレスデンで誕生し、1329年以前にはすでに作られていたと伝えられています。

いずれも長い歴史を持つ伝統菓子です。

材料の違い

どちらも小麦粉・卵・バター・砂糖・酵母を使った生地に、ドライフルーツを加える点では共通しています。ただし、シュトーレンにはアーモンドやフルーツコンフィが加わるのが特徴です。

生地と具材の割合

パネットーネは「生地4:具材1」と、生地が中心でふんわりとした軽やかさが魅力です。これに対してシュトーレンは「生地2:具材1」と具材が多く、ぎっしりとした食べ応えがあります。

  • 一般的なパネットーネとシュトーレンのレシピで比較

見た目と食感の違い

パネットーネはブリオッシュ生地がしっかりと膨らみ、ふわふわの食感と山型のフォルムが特徴です。

一方シュトーレンはコンパクトで詰まった生地にドライフルーツやナッツがたっぷり入り、横長の山形をしています。ずっしりと重く、保存性が高いのも魅力です。

パネットーネ
もりりん
パティシエ
フランスのパティスリーで働いでいます。フランスの大学の歴史学科で勉強してます。よろしくね
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