lait 牛乳
今回は、フランスと日本の牛乳の種類・殺菌法について解説します。牛乳の種類を知って、料理やお菓子に応じた牛乳選びができたらいいなと思います。
品詞 | 名詞 |
名詞の性 | 男性名詞 |
定冠詞 | le lait |
部分冠詞 | du lait |
発音 | レ |
フランスの牛乳
ラベルの色で分かる牛乳のタイプ
フランスで販売されている牛乳は、ボトルに貼ってあるラベルの色で牛乳の種類が分かるようになっています。

- 黄色:生乳(lait cru)のことで、乳脂肪が1リットル当たり30〜70g含まれています。
- 赤色:全乳(lait entier)のことで、1リットル当たり脂肪分は36gです。
- 青色:demi-écrémé のことで、クリーム分を半分分離したものを指します。低脂肪牛乳に似ています。
- 緑色:écrémé のことでクリーム分を取り除いた牛乳のことで、無脂肪牛乳のことです。
製菓や料理には基本的には全乳をつかいます。脂肪分が多く風味を感じますが、好みによって使い分けすることもできます。
フランスの牛乳の種類
フランスの牛乳は殺菌の方法によって種類が分けられます。牛乳の殺菌は2種類あり、低温殺菌法と高温殺菌法に分けられます。
- 低温殺菌(Pasteurisation)
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フランス人の生化学・細菌学者のルイ・パストゥール(Louis Pasteur)が開発した低温殺菌法のことで、彼の名前から付けられました。60〜90℃で微生物を死滅させる低温殺菌方法です。
- 高温殺菌(Stérilisation)
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100℃以上の高温で殺菌する方法。
この2つの殺菌方法は日本でも同じです。
- Lait cru entier(生乳)
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生の牛乳のこと。搾乳した農場の牛小屋内で瓶詰めがおこなわれた牛乳のことです。熱処理をしていないのでその名の通り生の牛乳です。
3℃で保存して、未開封前でも3日しか保ちません。スーパーにもありますが、保存がきかないのでマルシェで売っているのが主流です。
熱処理を全く加えていませんので、いちばん牛乳のうまみが残っていますので美味しいですが、手軽に入らないし保存がききません。
- Lait frais pasteurisé
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低温殺菌をした牛乳。
72〜85℃で20〜25秒低温殺菌した牛乳のことで、病原性の細菌の一部しか死滅させていませんが、酵素とビタミンと牛乳本来の風味が残っています。
3℃で保存して7日保存できます。スーパーでは冷蔵コーナーにあります。
- Lait stérilisé simple
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stérilisé は「高温殺菌した」という意味です。瓶詰め後に130℃で3〜4秒高温殺菌した牛乳で、酵素と病原性の細菌は死滅します。そのかわり風味と色味が薄れてしまいます。
15℃の環境で120〜150日保存可能です。こちらはスーパーに常温で置かれています。
- lait stérilisé U. H. T
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U. H. T とは Ultra haute température(超高温)のことで、超高温で殺菌された牛乳のことです。フランスでみられる一般的な牛乳はこれです。
140〜150℃で2秒殺菌し、急速に冷やし、瓶の中を無菌状態にします。病原性の細菌は死滅します。酵素、ビタミン、風味や色味は一部だけ保たれています。結構しゃばしゃばの牛乳です。
15℃の環境で90日保ちます。スーパーでは常温で大量に並んでいるし、パック買い(6本)する人も多いので、この牛乳が主流なんだなって思います。
- Lait concentré(sucre)
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concentré とは「濃縮した」という意味なので、濃縮牛乳や練乳のことを指します。55℃で数秒低温殺菌しながら、水分を飛ばします。糖分を加えて濃縮した後に高温殺菌をします。
15℃で数十ヶ月保存できます。
- lait en poudre déshydraté
-
déshydraté とは「脱水した」という意味で、脱脂粉乳のことをいいます。55℃で数秒低温殺菌した後に、150℃で霧状に噴射させて、パウダー状にします。常温で12〜18ヶ月保存できます。
牛乳からできる製品
牛乳からヨーグルトやチーズ、クリームやバターが作られます。それぞれの製品をつくるためにはたくさんの牛乳が必要となります。(フランスの場合)
- 1リットルの牛乳=1リットルのヨーグルト
- 10リットルの牛乳=1kgのクリーム(生クリーム)
- 12リットルの牛乳=1kgのエメンタルチーズ
- 22リットルの牛乳=1kgのバター
日本の牛乳
生乳の種類(日本の場合)
牛から搾ったままの乳を生乳(せいにゅう)といい、生乳には4種類あります。容器の「種類別名称」の欄に「生乳100%」と書かれてあります。
- 牛乳
-
生乳を加熱殺菌しただけの牛乳のこと。水や他の成分を加えてはいけません。乳脂肪分は3.0%以上含まれています。季節により乳脂肪などの成分は変動するため、%には「以上」の表記がついています。
- 成分調整牛乳
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生乳から水分や乳脂肪分、ミネラルなどを除いて成分を調整した牛乳のこと。乳脂肪分を減らしたものや増やしたものがあります。
- 低脂肪牛乳
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生乳から遠心分離機で脂肪の除去して、乳脂肪分が0.5%~1.5%に調整したものです。
- 無脂肪牛乳
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生乳から遠心分離機で脂肪のほとんどを取り除き、乳脂肪分を0.5%未満にしたもの。
- 成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳ともに無脂乳固形分8.0%以上あるため、カルシウムやたんぱく質は生乳と同様に含まれています。乳脂肪の量に違いがあります。
牛乳の殺菌法(日本の場合)
牛乳には5種類の殺菌方法があり、殺菌方法によって香りや風味に違いが出ます。
名称 | 殺菌方法 |
---|---|
低温保持殺菌法 | 62~65℃で30分間 |
高温保持殺菌法 | 75℃以上で15分間 |
高温短時間殺菌法 | 72℃以上で15秒間以上 |
超高温瞬間殺菌法 | 120~130℃で2~3秒間 |
超高温瞬間滅菌法 | 130~150℃で1~4秒間 |
日本では9割以上の牛乳が超高温瞬間殺菌法によって処理されます。高温で殺菌するため、風味や香りが消えてしまいます。70℃以上で牛乳を加熱するとホエータンパク質という成分が変性し、硫化水素が発生し硫黄臭を感じます。
乳牛の種類(日本の場合)
乳牛にはホルスタイン種とジャージー種があります。日本の牛乳の多くはホルスタイン種の乳牛からとれる牛乳です。
ホルスタイン種 | ジャージー種 | |
---|---|---|
日本の飼育割合 | 99% | 1% |
1頭あたりの乳量/年 | 8000kg | 4000~5000kg |
乳脂肪分 | 3.7~3.9% | 5% |
ホルスタイン種とは白地に黒いまだら模様の乳牛で、ほかの種類の乳牛に比べて2倍の乳牛がとれる生産性のよい乳牛です。一方、ジャージー種の乳牛は脂肪分が高く、濃厚な風味をもつ牛乳がとれます。
ジャージー種やガンジー種の乳牛も近年では人気の出てきています。
加工乳と乳飲料(日本の場合)
生乳にべつの成分を加えると加工乳や乳飲料となります。
- 加工乳
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生乳に、クリームやバター、脱脂乳や脱脂粉乳、濃縮乳などの乳製品を加えたもの。乳脂肪分を少なくした低脂肪加工乳、濃縮乳やクリームやバターを加えた濃厚か購入があります。
- 乳飲料
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生乳にミネラルやビタミン、コーヒーや果汁を加えたもの。ただ、「乳飲料」と表記するためには乳固形分を3.0%含まなければなりません。
関連語
- le lait cru(レ クリュ) 生乳
- le lait entier(レ アンティエ) 全乳
- le lait demi-écrémé(レ ドゥミ エクレメ) 低脂肪牛乳
- le lait écrémé(レ エクレメ) 無脂肪牛乳
- le lait écrémé en poudre(レ エクレメ アン プゥドル) 脱脂粉乳
- le lait en poudre(レ アン プゥドル) 粉乳
- le lait en poudre déshydraté(レ アン プドル デシドラテ) 粉乳
- le lait concentré(レ コンサンントレ) 濃縮乳、練乳
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