ベラベッカはフランスのクリスマスを彩るお菓子の一つで、寒い時期にはぴったりな濃厚な味わいです。
この記事では材料やレシピ、名前のバリエーション、食べごろと日持ちといったベルベッカについて説明するとともに、シュトーレンとの違いを解説します。
ベラベッカとは?
ベラベッカとは、フランスのアルザス地方発祥のドライフルーツをたっぷり加えて焼いたパンのことです。
ドライフルーツには干し梨、イチジク、プラム、アプリコット、レーズン、グロゼイユ(赤スグリ)を用います。さらに、ヘーゼルナッツやアーモンド、クルミといったナッツも加え、シナモンやナツメグ、レモンやオレンジの皮、キルシュで風味をつけます。
砂糖や卵、バターは加えていないため、お菓子とは言わずにパンと言われています。たっぷりのドライフルーツを加えることで甘味を足しています。
ベラベッカは栄養を豊富に含み、昔の飢餓の時期に食べるために作られていました。
伝統的にはアルザス地方(特にバ=ラン県)では12月24日の真夜中のミサの後に食べられていました。現在でもクリスマス時期のお菓子として親しまれています。

ベラベッカの発祥はアルザス地方ですが、南ドイツやオーストリア、スイス、イタリア・チロル地方に伝わっているとされています。
ちなみに、イタリアにベラベッカとほぼ同じドライフルーツ入りのパンがあります。パンフォルテ(Panforte)と言い、こちらもイタリアの伝統的なクリスマス菓子です。イタリア中部トスカーナ州シエナとその周辺地域が起源で、11世紀ごろには作られていたという文献が残っています。
フランス語の名前
ベラベッカは発音の違いや地域によりさまざまな綴りがあります。
- Bierewecke / Berauwecke / Bierawecke / Berawecka
-
[ベラヴェッカ]ベラベッカ / フランス語
アルザス語で、beraは「洋梨」、weckaは「小さなパン」という意味です。 - Pain aux fruits
-
[パン オ フリュイ]フルーツパン
ドライフルーツを豊富に用いるため、「フルーツパン」と呼ばれることもあります。
Hutzelbrot[フッツェルブロート] とも呼ばれます。
ベラベッカのレシピ
1982年に出版されたアルザス菓子のレシピ本 « La Pâtisserie alsacienne » を参考にしました。
- 準備時間:1時間
- 焼成時間:35分
- 休ませる時間:2日+13時間
材料
ベラベッカ2個分
- ドライフルーツ・ナッツ
-
- ドライ洋梨 100g
- ドライプラム(ブルーン) 100g
- ドライイチジク 100g
- ドライアプリコット 100g
- 干しぶどう 80g
- ヘーゼルナッツ 20g
- スライスアーモンド 20g
- クルミ 40g
- キルシュ 120cc
- 生地
-
- 小麦粉 100g
- シナモンパウダー 小さじ1/2杯
- クローブ 少々
- ナツメグパウダー 少々
- 酵母 6g
- 塩 少々
- 飾り
-
- アーモンドホール
- くるみ
- 粉砂糖 150g
- キルシュ 大さじ1杯

ベルベッカの作り方
ドライフルーツとくるみを小さく刻みます。容器にドライフルーツとナッツ、キルシュを入れ、蓋をし、2日間漬けます。
[2日後]ボウルに小麦粉とスパイス類、塩、酵母を入れ、捏ねます。1時間ほど生地をおき、発酵させます。キルシュにつけていたドライフルーツとナッツを生地に加え、混ぜ合わせます。
生地を2個に分け、細長い楕円型に成形します。表面にアーモンドとくるみを飾ります。
200℃に熱したオーブンで、30分〜35分焼きます。
粉砂糖150gとキルシュ大さじ1杯を合わせ、軽く温めます。ベルベッカをオーブンから出し、すぐにそのシロップを表面に塗ります。
ベラベッカの食べごろと日持ち
手作りのベラベッカは焼き上がりから少なくとも2〜3日は寝かせておきます。できれば、2〜3週間後に食べるのが美味しいとされています。乾燥してしまったベラベッカも薄く切って食べるのも美味しいとされています。
手作りや市販のベラベッカはしっかりとラップなどで密封して、冷所や冷蔵庫で保存します。

ベルベッカとシュトーレンとの違い
ベラベッカとシュトーレンはどちらもアルザス地方発祥の食べ物であり、加える材料も似ています。どちらもパティスリー(pâtisserie)に分類されています。


ベルベッカとシュトーレンは生地に加える具材(ドライフルーツやナッツ)の割合が大きく異なります。
生地割合 | 具材割合 | |
---|---|---|
ベルベッカ | 1 | 6 |
シュトーレン | 2 | 1 |
- ベルベッカは生地部分が1に対して具材は6となり、シュトーレンは生地2に対して具材は1となります。(下記の材料参照)
牛乳 / 小麦粉 / 卵黄 / 砂糖 / バター / 酵母 / 塩
レモンの皮 / アーモンドスライス / 干しぶどう / オレンジコンフィ
つまり、ベルベッカはドライフルーツとナッツで占められています。甘さはドライフルーツで補い、卵やバター、砂糖は加えられていません。生地は小麦粉のみを用いており、パンと言われることもあります。
一方、シュトーレンは生地の方が割合が高く、ドライフルーツやナッツは生地の半分量です。シュトーレンは卵とバター、砂糖を加えるブリオッシュ生地を用いており、お菓子に近いです。
よって、ベルベッカとシュトーレンの違いは具材の割合と生地の材料の違いにあります。
- Berawecka
- Josiane Syren, La Pâtisserie alsacienne, Paris, Saep, 1982, p9.
- Dictionnaire de la gourmandise: Pâtisseries, friandises et autres douceurs
- Le dictionnaire des chefs Ferrandi Paris